生産技術エンジニアにとってのマストスキルとは?|【仕様書の書き方】編

こんにちは、生産技術開発部のナカッサンです。
日ごろ生産技術開発部では、生産活動を自動化するための設備やロボットの開発をしています。
今回は、僕らが社外の設備メーカー(以下:ベンダー)と協力して生産設備をゼロからカタチにするための「仕様書」についてお話をします。

工場には生産技術部が導入した生産設備、検査装置がたくさん並んでいます。
前提としてメトロールでは、工場にある全ての生産設備をゼロから社内で開発しているわけではありません。「餅は餅屋」という発想から、開発の規模に応じてオートメーション技術に長けた社外のベンダーさんに設備の共同開発を依頼することも珍しくありません。

ベンダーの役割、メトロールの役割

ベンダーさんと組む場合、僕たちの担う役割は

  • 「生産ラインのどの工程を自動化すべきか?」
  • 「どんな条件なら自動化ができるか?」
  • 「誰とパートナーシップを結べば実現できるか?」

としており、ベンダーさんと業務のすみわけをしています。

「仕様書」の役割とは?

仕様書」は、装置を開発するうえで、クライアント(=メトロール)と開発者(=ベンダー)との間で認識をすり合わせる為の書類を指します。装置にどのような機能を持たせるのか、など具体的な開発内容をまとめたものです。

前置きが長くなりましたが、今回のテーマをあえて「仕様書」に絞った理由はずばり。

この仕様書を作るスキルが、生産技術者にとってめちゃめちゃ大事なんです!「仕様書のクオリティ=生産技術者のレベル」 と言っても大げさではないくらい。そして、この仕様書の完成度がプロジェクト成功を左右する開発の要となるからなんです。

「ただの書類作成でしょ?」と一部のエンジニアの間では軽視されがちなこの仕事。
メトロールでは、クオリティの高い仕様書を作れることが生産技術者の重要なスキルだと考え、若手の育成にも重点的に取り組んでいます。

仕様書の詰めが甘いままプロジェクトが走りだすと
× 僕たちの要求を満たしていない装置が完成する
× 出戻り修理に時間がかかって納期が遅れる
× 当初の予算をオーバーする

最悪の場合、プロジェクト自体が破綻することだってあります。そうなれば社内だけでなく、世界中でメトロールの製品を待っているお客様にとっても不利益です。

よい仕様書を書くには、「形にしたいものを客観的な表現で正確に伝えられる能力」が必要です。

エンジニアとしての知識や技術だけが優れていてもダメ。相手を説得できる高い文章力や構成力、コミュニケーション力も磨かなければ身に付かないのです。

本ブログでは、これまで多くの装置開発に携わった筆者が大切だと考える、仕様書作成のためのポイントをご紹介します。
生産技術開発部の仕事や、教育体制についても知ることができます。ぜひご一読ください!

このブログでわかること

・エンジニアに欠かせない「仕様書」作成のポイント
・メトロールの生産技術開発部の仕事内容
・メトロールの若手エンジニア教育体制

仕様書の種類

「仕様書作成のポイント」の前に、仕様書の種類や目的について簡単に解説しておきましょう。

仕様書は、全般的に「つくるものの内容を明確にする書類」のことですが、書く人の立場によって種類がちがいます。

文書名(書く人)描かれる内容
装置仕様書
(開発元・クライアント)
装置の目的・機能・性能などを明確にする
購入仕様書
(クライアント)
依頼する開発内容を明確にする
納入仕様書
(開発元)
クライアントの要求内容を実現するための方法を明確にする
▲仕様書の種類(一部)

このブログで紹介する「購入仕様書」は、装置を購入するときにクライアント(=メトロール)が開発内容を明確にしたものです。開発元(ベンダー)はこれを元に見積もりを出します。

購入仕様書の内容

・装置の目的
・装置の性能
・納品までのスケジュール
・装置の図面、取扱説明書などの文書類など

仕様書を書く理由

購入仕様書を作成する理由は大きく2つあります。

  • 開発元(ベンダー)と意思疎通をはかる
  • 複数の企業から見積もりをとり、設備をより安く調達する

既存の装置を発注するなら、クライアントとベンダーの認識が食い違うことはほぼありません。しかし、メトロールの場合は「一点モノ=オーダーメイド」の装置をゼロから開発・製造してもらうことがほとんどです。この場合、購入仕様書でどんな装置が欲しいのかを文書化し、複数の機械メーカーから見積もりを出してもらいます。装置の性能や値段を見比べた上で購入すればコストを抑えられます。

ここからは、実際に購入仕様書を書く時のポイントについて解説します。

購入仕様書のポイント① 要求条件を具体的に書く

1つ目のポイントは、こちらの要求条件(=新しい装置で何を実現したいか)をできる限り具体的に書くことです。

このとき、誰がみても誤解を招かない「数字」で示すことが重要です。「この部品の厚みは●mm以下におさえてください」など具体的に数字で示し、「できるだけ小さく」といった曖昧な表現は避けます。

この「達成したいことを数字に置き換えて説明する作業」が僕らの腕の見せ所です。

例えば、これまで職人さんが手でやっていた作業をロボットで自動化するとします。職人が長年の経験で習得した「感覚」や「勘」に頼っていた動作を数字に置き換えます。腕の角度、力の加わる方向、力加減など、職人にしかわからない動きを細かく調査して値を割り出します。さらに、どこまでを許容範囲とするか基準値を設定します。

基準値を見積もりの時点でしっかり定めておかないと、後々先方とトラブルの元になりかねません。後出しはご法度です。プロジェクト始動前に完成形の明確なイメージを持つのは難しいですが、差し戻しを避けるためにもこの時点で的確な仕様を先方に伝える必要があります。

メトロールの要件定義は高難度?!

「どことパートナーシップを結べば実現できるか?」=「ベンダーコントロール」を成功させるうえでも、購入仕様書の完成度は非常に重要です

「ビジネスパートナーを見つけること」これがプロジェクト最初にして、実は最大の山場だったりします。

というのも、メトロールの購入仕様書にかかれる要求仕様はとても厳しく、実現するには難易度の高いものばかりなんです。
僕らがつくっているのは世界一高精度なセンサ。他にはない特殊なモノをつくる装置を開発するわけですから、当然、一般的な仕様じゃ達成できません。

難易度の高い開発案件が多く、「ベンダー泣かせ」と言われています。(笑)

メトロールの世界最小級センサ「PTタッチスイッチ」の自動組み立て機を開発したときも、機械メーカー6社に開発の打診をしましたが、5社からは「ウチには無理です」って白旗上げられてしまいました。
なんとか1社が引き受けてくれましたが、「こんな難しい開発は創業以来はじめてだ」と言われました。
(※この話の詳細はプロジェクト記事にあるのでご覧ください!)

他にも過去にはこんな厳しい要求仕様がありました。

高速 繰返し精度試験機 
【ニーズ】  測定の再現性が相当高いことが必要
【仕様】   マスターゲージ 30回測定値 3σ 0.3μm以下
トータル試験機 
【ニーズ】   PLC制御で10,000機種のデータを設定可能とする工夫で、型番の自動仕分けアルゴリズム実現する
【対象製品型番】10,000機種 
【制御】    PLC 
【仕様】    バーコードでの機種読み取りで試験データ自動設定
▲メトロールが機械メーカーに要求した装置の仕様例

何言ってるのかわからなくて大丈夫です(笑)難しい内容なので、書いてる僕らも毎回鍛えられています。

僕らが成し遂げたい超難題に最後まで一緒に立ち向かってくれるパートナーを見極める上でも、ベンダーが開発を引き受けるかどうか決断するためにも、その材料となる購入仕様書は正確でなければならないんです。

購入仕様書のポイント② アプローチはお任せする

購入仕様書を書く上で僕が1番大切だと思うのは、「装置で実現したい内容は明確にするけど、実現方法はベンダーが得意なやり方にまずは任せる」ということです。なのでタブーなのは、「このやり方でつくってください」とアプローチ方法からガチガチに決めてベンダーさんを「指示待ち」にしてしまうこと。プロジェクトを成功させるための一番のミソですね。

だから、たとえ自分に画期的な実現方法のアイデアがあっても、それは仕様書に書きません。
こちらがやり方を縛ってしまうと、先方が得意なやり方を持っていてもそれを採用できなくなり、コスト的にも不利になりますよね。もちろん、プロジェクトを進めていく中で先方と意見を交わすことはありますが、まずはベンダーさんの考えを聞くようにしています。

メトロールの生産技術開発部で身につくスキルと教育体制

ここまで仕様書の書き方のコツをお話してきましたが、メトロールにはそのスキルを磨くには最適な環境があると思っています。その理由は2つあります。

  1. 仕様書を書く機会が多く、若手のうちから経験を積むことができます。
  2. シニアと若手でタッグを組んでプロジェクトを進めるサポート体制があります。

1.  仕様書を書く機会が多い

僕はシニア採用で入社したのでわかりますが、他社と比べてメトロールは設備投資も頻繁ですし、その予算規模もかなり大きいと思います。今年度だけでも17台の装置が導入される予定です。それも、世界初となる完全自動の研削盤など、最新鋭の装置です。

原材料不足やコロナ禍などさまざまな要因で設備投資を見送る企業が多い中、メトロールではありがたいことに攻めの姿勢で設備投資ができています。それだけ仕様書を作成する機会に恵まれています。

2. サポート体制が充実している

僕は生産技術開発部のリーダーとして後輩の育成も行っています。仕様書作成のノウハウを学んでもらうときは、過去に作成した装置の仕様書を参考に、対象の案件について過不足の内容を議論する場を必ず設けるようにしています。

若手のエンジニアには、議論の前にまず自分で考えてもらう。いきなり答えは提示しません。考える時間を十分持てるように、他の業務を調整して若手に負担が重くならないように気を付けています。

現在メトロールの生産技術開発部は、自分を含めて4名。若手のうちから大企業ではなかなか担当できない大規模な開発に中心的に関わることになります。もちろんプレッシャーもあると思いますが、私もサポートにつきますし、経験をつみたい!自らを鍛えたい!という人にはもってこいの環境です。

相手に正しく伝わる文章を書く力」は、どの業種でも、どの企業でも必要なスキルでもあります。生産技術開発部のチームとして、さらにスキルの底上げをしていきたいですね。


メトロールでは一緒に働く仲間を探しています。

メトロールは生産設備や工作機械などの自動化に貢献するセンサーメーカーです。東京都立川市で作ったセンサは世界74ヶ国、7000社以上のお客様にご利用いただいています。次世代のものづくりや設備に使用されるユニークなセンサの企画から開発・製造までを一貫して行う開発型メーカーでもあります。

メトロールブランドを共に支え世界へ広めてくれる仲間を探しています! 少しでも興味を持っていただけた方は、メトロールまで気軽にご連絡ください。まずはカジュアル面談からという方でもOKです!

生産技術のしごと
新卒エントリー
中途エントリー
シニア採用情報
メトロールのビジネスとは?

記事をシェア