海外営業の仕事|販売チャネル開拓とは?【アメリカ編】

海外営業の仕事|販売チャネル開拓とは?【アメリカ編】

プロジェクト概要

テーマ
北米の販売チャネル(EC)開拓プロジェクト
PJメンバー
タイソン(海外営業、リサーチ)、あやっぺ(運用)、りょうさん(物流)
PJ期間
約6か月間

皆さん、こんにちは!マーケティング部のタイソンです。
突然ですが、「自分の会社で最も誇れることは?」と聞かれたら皆さんはどう答えますか?

私は迷わず「世界中から必要とされるセンサを作れること」と答えます。
そのくらいメトロールのセンサは他にはないユニークさがあり、毎日世界中のお客様からお問合せが寄せられているんです!

そんなメトロールでは当然「海外販路の開拓」が重要なミッションの1つでもあります。そこで今回は、海外展開の成功事例として「北米市場の販路開拓プロジェクト」の具体的なプロセスを解説します。

  • メトロールの海外ビジネスとは?
  • BtoB製造業の販売チャネル開拓って実際どんなことをやるの?

といった疑問へのヒントになればと思いますので是非お付き合い下さい !

BtoB製造業の海外営業のシゴト:新規市場の開拓

さっそく結論ですが、メーカー海外営業の重要な仕事の1つに【新規市場の開拓】があります。
メトロールは20年以上、グローバル向け直販ECサイトを運営し、74ヶ国以上のお客様との取引実績があります。
各国の売上自体はまだ小さいものの、伸びしろは大いにあると考えていました。

理由は、特別なプロモーションをしなくても新規のお客様からの取引が自然と毎年少しずつ増えていたからです。
認知度をさえ広がれば「メトロールのセンサを使ってみたい」という新規のお客さんはまだまだ眠っているという確信がありました。

ターゲットはアメリカのEC市場

そこで以下の3つをテーマに、北米販売チャネルの新規開拓プロジェクトを立ち上げました!

  • ターゲットエリア:北米
  • 商材:主力製品の1つ「タッチスイッチ」
  • 販売チャネル:インターネット販売(EC)

プロジェクトの条件を「北米、タッチスイッチ、EC」に限定した理由を説明すると、

  1. 製造業において北米はビッグチャンスが眠っている
  2. タッチスイッチがネットECとの相性の良い商材
  3. 国土の広い北米では訪問営業はコストが合わない

1.製造業において北米はビッグチャンスが眠っている
生産拠点という視点では、人件費の安い中国やASEANがまっ先に思いつきますが、新たなプロダクトやサービスを生み出す力においてはアメリカは無視できません。
製品設計のタイミングからメトロールのセンサが採用されれば、生産が海外に移っても採用され続けるチャンスもあります。
ビジネスチャンスが眠っているアメリカでメトロールの認知を広めるのは重要と考えました。

狙うはまさに現代のアメリカンドリームです!

2.タッチスイッチがネットECとの相性が良い!
日本国内の大手ECサイトではタッチスイッチのセールスが好調で、「商品が認知さえすれば売れる!」とEC販売におけるポテンシャルの高さには確信を持っていました。

特にメトロールのタッチスイッチは

  • 手ごろな価格
  • 小さいので国際宅急便でも送料が安い
  • 汎用的な商品ながらも差別化されていてメトロールしか作っていない

などの理由から、ユーザ自身で購入判断がしやすい商材で、ECとの相性が非常に良いことは自社ECサイトでも検証済みでした。
逆に、ECで難しいのは

  • メーカーサポートが伴う商材
  • 現地に代替品がある希少性の無い商材

です。こうした商材をECパートナーに手離れ良く販売してもらうのは、ハードルが高いと考えていました。
代替品がある商材も日本から海外のECにわざわざ持ち込んでも、扱うメリットも無いと門前払いされてしまうでしょう。

タッチスイッチがECに向いている理由EC販売が難しい商材
価格帯手ごろ高額(数十万~数百万)
商品のサイズと送料小さくて安い大きい(重い)と高額
希少性メトロールにしかない別メーカー製の代替品がある
購入時の営業サポートユーザが自分で判断して購入できるメーカーサポートが必要
タッチスイッチがECに向いている理由

3. 国土の広い北米において訪問営業は非現実的
当社はアメリカに現地法人がなく、現地にも営業代行してくれるパートナーもいません。仮にあったとしても、タッチスイッチは商材単価も低く、営業コストが合いません。
ECでの販売なら、現地法人を作るよりも立ち上がりが早く、海外市場のテストマーケティングとしても合理的だと考えました。

「顧客層×販売力」がマッチする海外ECサイトを探せ!

「顧客層×販売力」でマッチしそうな生産財ECサイトを探すことが最初の課題でした。
※生産財とは、部品や工具など生産活動に使用されるものを指します。日用品などの一般消費財とは真逆の商品です)

ECサイトに商品をただ掲載してもらえればOK!では意味がなく、タッチスイッチを必要とするお客様が集まり、かつ販売力のあるECサイトとパートナーシップを結ぶ、ことがとても重要でした。

相性のよいECパートナーとは?

一口に生産財ECと言っても商材カテゴリは幅広く、数多くのサイトが存在します。

  • 電子部品に強いECサイト
  • 歯車やバネ、ネジなどメカ部品に強いECサイト
  • 工具など工業向けの消耗品が充実しているECサイト

などがあり、それぞれのECサイトは得意な商材とそれを求める顧客を抱えています。

国内の生産材ECの例海外の生産材ECの例一般消費財ECサイトの例
ミスミ   (メカ系部品に強い)Grainger     (メカ部品に強い)アマゾン
モノタロー (生産財消耗品に強い)RS Components (電子基板周辺に強い)ゾゾタウン (衣料品に強い)
<取り扱い商材>
ネジ、ボルト、歯車、工具
モーター、センサー、PLC、電子基板
<取り扱い商材>
ネジ、ボルト、歯車、工具
モーター、センサー、PLC、電子基板
<取り扱い商材>
日用品、衣料品、食料品、家電  
  
生産財と消費財の違い

例えるならゾゾタウンと町の小売店

ECパートナーも大企業から町の電気屋さんの規模まで様々で、顧客層がマッチしても売上に繋がらない、なんてこともありえます。

例えるなら、私が「50代向けの洋服メーカーの担当者」で商品を置いてくれる販売店を探しているとします。
ファッションECサイトのゾゾタウンは規模も大きく販売力がありそうですが、メイン顧客層は20代で、40代以上のユーザは少なく出品しても売上を伸ばすのは難しいでしょう。かといって、郊外のシニア向け個人経営の小売り店では顧客層はマッチしても販売力で折り合いがつきません。

つまり、どこのショーウィンドウに商品を並べるのか?というのがとても重要なテーマなんです!

始まりは、地道なECパートナー探し

本プロジェクトではまず

  • 100社以上の生産財ECサイトのリストアップとリサーチ
  • 北米現地からのアプローチ(サンプル送付作業などの実作業・電話フォロー)

を行いました。リストアップした100以上ECサイトを片っ端からリサーチを行います。こうした調査作業はアナログで地道に行います。自分たちが自社製品を一番理解しているので、どのECが相性が良いかの判断は自らが判断すべきとも考えています。

ECサイト調査で重視したポイントは大きく2つ。

①集客力のあるECサイトかどうか
サイト内の検索機能やUI(サイトの使い勝手)が高度に設計されているECサイトは、取り扱い商材が豊富で集客にもコストをかける姿勢が垣間見えるので重視しました。

②取り扱い商材のカテゴリ
マイクロスイッチや近接センサなどカテゴリ製品を扱っているECサイトはタッチスイッチの顧客層とも相性が良いので有力候補としてピックアップしました。

1日中サイトをリサーチしていると感覚がマヒしてサイトごとの違いがよく分からなくなってきます笑

優先順位をつけて、いざアプローチ!

次にリストアップしたECサイトに優先順位を付けをして各社にアプローチをかけます。

  • オファーレター&製品サンプルセットを送付
  • サンプルセットを送付後、スルーされないようメール、電話での後追いフォロー

御社のECサイトでメトロールの商品を扱ってみませんか?」という趣旨のオファーレターと製品サンプルを同封してレターを送りました。
アメリカは時差も大きいので、現地にある日系の営業支援パートナーにも協力を仰ぎながら送付後のフォローを行いました。

待ちに待ったアプローチへの反応は?

実際やってみてわかったのは、良いECサイトを見つけても相手が2つ返事で「メトロール製品を扱いたい!」と言ってくれるとは限らないことでした。
実際、90社以上アプローチして良い反応があったのは3社程度。遠隔での海外営業の難しさを感じました。

バンバン反応がきて、入れ食い状態を想像していましたが全く違いました…笑

返事をくれたとしても、「独占契約が無ければ扱えない」とお断りされるケースも多かった気がします。

独占契約とは?

独占代理店契約(=独占契約)というのは、その代理店に、その商品の取扱を独占させる契約です(エリアや期間に限定を設けるのが一般的です)。代理店にとって、独占契約は魅力的です。

代理店としては、コストをかけて販売活動を行います。ようやく販売実績が上がり、コストを回収できる段階になっても、他の代理店に楽に販売されたらたまりません。代理店としては、コストをかけるからには、なるべく独占契約にしたいところです。

代理店販売において、メーカー側と代理店側へのメリットとは( https://itbengoshi.com/page-3655/)

逆に言えばメーカー側のリスクは、代理店の販売モチベーションが低いと契約期間は販売不振が続いてしまい、改善の手が打ちにくくなるという点です。もちろん独占契約をして、販売店のモチベーションを高めるのも手段の1つですが、商材や目的によって使い分けが必要です。

今回のメトロールのスタンスは、購入方法はユーザが選べるようにしたいので1社と独占契約は結びません。なので独占権が無くても取り扱いたい、と言ってくれるパートナーを探していました。

ようやく出会えた北米パートナー

アプローチに対してAutomationDirect.com(以下:AD)というアメリカのアトランタにあるEC企業1社だけが好感触な反応を示してくれました。
ADのECサイトは、

  1. センサと相性が良いPLCとその周辺機器を扱うECサイト
  2. サイトの検索機能が高い
  3. WEBコンテンツを活用した高いプロモーション力がある

などが充実。顧客層がマッチし販売力もありそうなEC企業だと考えていました。相手も、メトロールの商材はユニーク性が高いと非常に興味を持ってくれていたので、翌月には渡米して商談するフェーズへとスムーズに進みました。

BtoB製造業の海外営業が見つけたECパートナーのサイト
ADのECサイト

――当時のオファーへの返信文―――

Thank you for submitting the product proposal for your precision limit switches.  
These are definitely a product that we currently do not sell here at AutomationDirect.  Do you have any other sales presence in the US market?
(センサの提案を送って頂きありがとうございます、ADでは間違いなく取り扱っていない製品です。北米市場では販売拠点はありますか?)

リサーチの段階でも、「ADはパートナーとして合いそう!」と期待度がいちばん高い企業の1社だったので、返信メールを見た時は震えました…!

いざ商談の場、本社アトランタへ!

相手の熱が冷めないうちにと、本社のあるアトランタに渡米しすぐ商談を行いました。
ちなみに、私自身は英語が得意ではないので通訳さんを連れて商談に臨んだのですが、非常に温和な担当者で穏やかな雰囲気で商談できたので安心でした。

初めての商談では、

  • 双方の会社紹介
  • 製品プレゼン
  • ECサイトに掲載するラインナップ決め

など基本的な情報交換を行いました。メトロールの物流システムや運用を確認するため、翌月来日する流れで商談は終わりました。
滞在中は、アトランタの名物レストランに招待いただいて商談以外の時間でも色々と関係構築の時間が多かったような気がします。

海外営業として初めて訪問したアメリカのECパートナー
地元で有名なバッファローを使ったハンバーガーレストランでランチ。夜もステーキで肉三昧でした。

パートナー来日

翌月にはアトランタから東京本社に来日頂いて、

  • 工場の視察
  • 最終的な商品の掲載ラインナップの確定
  • 物流ルール決め(梱包方法や出荷時のラベルなど)

などを行います。

商談では、掲載する製品ラインナップを決めます
工場案内をしながらセンサの使い方をプレゼンします

扱う物量が膨大なECサイトでは、厳格な物流システムが構築されていて、梱包・発送形態や在庫管理にもルール細かく決められています。そのためメトロール側も納品先に合わせた社内ルールを営業部門と製造部門で調整する必要がありました。

オンラインだけでは関係構築はできない!

商談後は、東京近辺の観光を含めた、いわゆる接待も行いました。

  • 築地
  • 酒蔵、ウイスキー工場
  • 相撲や歌舞伎
  • 屋形船

など、The日本の名所を案内しながらフラットな関係作りも重要な業務と実感しました。

ジャパニーズ・ウイスキーが大好きな方々なので浅草のウイスキー専門店※にお連れしたところ、大変喜んでいただけました! (※ウィスキー専門店|酒右衛門

海外営業の仕事:海外のお客様の接待
メトロール本社来社時
浅草観光

1日観光案内するとなると、

  • 観光名所の下調べやタイムスケジュール
  • 施設、チケットの予約
  • お客様の好みの事前調査

など計画をスムーズに進めるための段取りが必要になります。接待と言えど海外営業として重要なスキルが磨かれる仕事だと痛感しました。

ECサイト公開に向けた最終調整

関係をしっかり結んだあとは公開に向けた最終調整を行います。

  • サイト用写真撮影に必要な製品サンプルの手配
  • 製品の2Ⅾ、3Dデータの用意
  • 契約書の最終調整と締結

などECサイトに掲載するWEBコンテンツの制作を固めていきました。

特に北米企業は契約書ベースで取引を行うため、内容の修正が欠かせませんでした。
基本、現地ルールにのっとった内容になっているので、和訳した上で内容を精査し、変更事項などをパートナーと調整する必要もあり、海外営業の重要な業務の1つです。

海外営業の仕事:契約書のチェック
契約書は日本企業向けに作成されていないので和訳しながら赤ペン修正が必要です。

いざ販売開始!

約半年ほどのやり取りを経て、いよいよ新販売チャネルでの販売が開始されました!
通常生産財では洋服や家電などと違って、販売開始後すぐ飛ぶように売れる!みたいなことはなかなかこの業界ではありません。

海外営業の仕事:公開後のWEBチェック
公開されたメトロールの製品ページ

しかしADはマーケティング能力が非常に高く積極的に

  • WEBコンテンツの制作
  • 米国内でのSEO対策
  • 自社顧客データベースを活用したメールマーケティング

などのマーケティング施策により、北米の新規ユーザの認知が広まっていきました。

販売力のあるECサイトは積極的に「売り込み」をしてくれるので助かります!

その甲斐あってじわじわと認知が広がり、数か月で数百万の売上がたち、数年後には期待を超える売上にまで成長してくれました。オンラインだと実感が沸きにくいですが、新たに北米のお客様に製品が届いている事実が如実に数字に現れます。

コロナピーク期をのぞけば右肩上がりで現在も売上が増え続けています。
ADからも「この業界でこんなに急激に売上が伸びる商品はめったにない」とお墨付きをもらい、メトロールの製品力をあらためて感じざるを得ないプロジェクトでした

海外営業の今後の目標

いかがでしたでしょうか?
とんとん拍子でうまくいったプロジェクトに見えますが、

  • パートナーを見つけるまでの泥臭いリサーチ業務
  • アプローチ時の工夫
  • 社内調整、販売までの段取り
  • パートナーとの信頼構築

などが泥臭いながらも重要なキー業務だったと感じています。

今後は、ヨーロッパや他の国々でもECパートナーの開拓を積極的に行いたいですね。
協業したいECサイトはすでに何社か候補がありますが、直近数年はコロナ禍で企業にオファーをしようにもコンタクトが困難な時期が続いていました。
最近はだいぶ行動制限も解除されてきているので、パートナー開拓を再始動していきたいと目論んでいます。

お読みいただきありがとうございます!


メトロールでは一緒に働く仲間を探しています。

メトロールは生産設備や工作機械などの自動化に貢献するセンサーメーカーです。東京都立川市で作ったセンサは世界74ヶ国、7000社以上のお客様にご利用いただいています。次世代のものづくりや設備に使用されるユニークなセンサの企画から開発・製造までを一貫して行う開発型メーカーでもあります。

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