新製品開発|次世代型ワイヤレスセンサの誕生秘話とは?

新製品開発|次世代型ワイヤレスセンサの誕生秘話とは?

プロジェクト概要

メトロールの無線センサー「ワイヤレスタッチプローブ」の改良に挑み、無線通信の精度向上を果たしたプロジェクトです。
無線センサーの改良に奮闘したエンジニアの鈴木さん(仮名)の試行錯誤と無線技術による未来の可能性をご紹介します。

テーマ
無線プローブ改良開発プロジェクト
PJ期間
約1年
PJメンバー
リーダー:開発部 鈴木さん
メンバー:製造部 アッキー

経歴を活かして自ら開発したい!とメトロールに入社

私が入社する前から、メトロールには無線通信の製品があり興味を持っていました。当時メトロールでは、自ら開発に関わるシニアエンジニアを探していると聞き、これまでやってきた経歴を活かせると思って入社しました。

入社後さっそく任されたのが、無線センサー「ワイヤレスタッチプローブ」の改良です。 このセンサーは工作機械の内部に取り付けられ、加工する素材(ワーク)の寸法計測など様々な用途で使用されます。無線通信(2.4GHz)を使い、測定信号を受信機に発信します。

センサーを無線にすることで、製造業でできることの幅が広がる

なぜ、センサーを無線にする必要があるのかというと、センサーのケーブルを無くすことで、機械ができる仕事の幅が広がるからです。

たとえば、ロボットアームに取り付けるセンサーにケーブルが繋がっていると、アームの動きを制限してしまいます。私たちも運動をするときには、ワイヤレスイヤホンの方が有線よりも快適ですよね。5軸加工機など、より複雑な動きをする機械やロボットは配線が難しく、機械の進化に伴って、センサーの無線化の需要も高まっています。無線であれば、工場のレイアウトを変える度にケーブルを引き直す手間やコストも削減できます。

通信を安定させるための2つのアプローチ

改良にあたっての技術的なポイントは、センサーと機械の間でいかに早く、確実に情報を届けられるかです。

これまでの製品は、ノイズ(*)が強い環境では通信の質にばらつきがみられることが課題でした。

日常生活の中では、たとえばWiFiが不安定で動画のダウンロードに時間がかかる場合、通信状態が良い場所を探したり、やり直してみたり、諦めて通信が安定するまで待ったりしますよね。しかし、モノづくりの現場で通信が途切れることは許されません。通信が途切れればセンサーの計測データに誤差が生じ、不良品を作ってしまいます。せっかくセンサーを無線にしても精度が落ちては本末転倒。お客様に安心して機械を運用していただくためには、通信を途切れさせない仕組みが必須でした。
(* ノイズ:他機器から漏れた電磁波を拾うことで混入する雑音)

改良の主なアプローチは以下の2つです。

  1. 通信方法の変更
  2. アンテナの最適化

1. 通信方法の変更

改良版では、センサーがワークを感知してから出力するまでの時間をわざと0.016秒遅らせて、その間に信号を何十回も送るという通信方法に変更しました。
一般の方にとって、無線通信というものは安定していると思われるかもしれませんが、無線エンジニアは「通信は繋がらないのが当たり前」という前提で考えます。 では繋がらないものをどうやって繋げるのか?答えは「何回も送ること」です。一定の時間内に信号を何十回も送れば、そのうち一回くらいは繋がる。繋がる確率をあげるアプローチが大事なんです。

旧製品では、センサーが検出物を感知したら、すぐに信号を出していました。これだと通信が途切れている間は空白となり、繋がった瞬間がワークに触れたポイントだと機械に誤認識されてしまいます。精度が求められるセンサーですから、寸分の誤差も出さない方法を追求しました。

そこで、送信する全ての信号に番号をつけることにしましたこうすればどの信号がいつ送られたものかがわかります。たとえば、通信が途切れてセンサーが発信した1〜4番の信号は届かず、5番の信号を受信機が受けたとします。送信にかかる時間は一定なので、あらかじめその時差をプログラミングしておけば「1番」(センサーが最初にワークに触れた瞬間)がどの時点なのかを割り出すことができます。 この方法で、センサーの通信と精度の両方を安定させることに成功しました。

2. アンテナの最適化

次に目を付けたのは「アンテナ」です。 これまで使用していたものは、金属など周囲の影響を受けやすいという課題が見つかりました。工作機械の内部は金属に覆われているため、いろいろなところに反射した電波が飛んできます。電波の向きが変わっても、平均して同じように捉えられるアンテナに変えようと考えました。

ただ、アンテナ探しは失敗の連続でしたね。
はじめはアンテナを共同で開発してくれるところを探しましたが上手くいきませんでした。

それならいっそ自分で設計してしまおうと、やったこともないアンテナ作りに挑戦しました。計算し、やすりで削って、測定して、の繰り返し。「俺何やってるんだろう?」と思いながら(笑)しかし設計まではできても、実際使えるものにならない。通信範囲がきれいな円を描くようなアンテナは、どうしても作れませんでした。 最終的には、市販のアンテナを20種類くらい試し、最も理想的な特性のアンテナを探し出しました。自作のアンテナでは超えられないクオリティだと判断して採用。商社を通して安く仕入れるルートも見つかりました。

自作のアンテナ作りに奔走し、既製品のアンテナを試し、そのたびに膨大なデータをとるという地道な作業の末に、ようやく納得がいく最適なアンテナを見つけ出すことができました。

▲改良した無線タッチプローブRC-K3X と 受信機(奥)

ノウハウ無しでも出荷検査ができる測定機械を導入

現在は製造部と協力して、現場の作業者が誰でも同じ品質の製品を量産できる仕組みを考えています。

これまでは規格的には認証を通っていても、実際にお客様の機械に取り付けて稼働させると、環境によって製品の個体差がでてしまっていました。 製品ごとのばらつきを無くすため、出荷検査により厳しい条件を課すことにしました。しかし、無線の検査には専門の測定器を使うので、専門知識やノウハウのない作業者にはハードルが高くなります。そこで、ボタン一つで検査できる特殊な装置の導入を社長に相談しました。そうしたら二つ返事でOKが。「え?そんな簡単に買ってもらえるんだ」と正直驚きました。メトロール規模の中小企業でこれだけ大がかりな装置を持っているところは、私の知る限りありません。お客様に安心して製品を使ってもらうために、品質には決して妥協することなく取り組む会社の姿勢を感じました

無線技術の可能性と展望〜
ワイヤレス製品の開発はまだ第一段階、その先に広がる未来のネットワーク化を見据えて

今後もますます需要が見込まれる無線技術ですが、無線化のその先に、ものづくりの環境を大きく転換することになる技術革新を見据えています。それは、無線を活用した工場全体のネットワーク化です。生産ラインのモニタリングや遠隔操作など、一か所ですべての動きを把握できるようになり、製造現場の完全な自動化が実現します。

現在、世界では製造業のマシンやセンサーをネットワーク化するための規格づくりがすでに始まっています。今はこのプローブという製品だけですが、他の既存製品に無線の技術を付け加えれば、突然ぐっと可能性が広がります。無線を使った構想に参画できる夢があります。

無線の技術は、将来的にはモノづくり業界のトータルソリューションとして展開できると思っています。そのために、僕ら無線開発者は未来のモノづくりの課題を見据えて、ネットワーク化に向けた仕掛けをを今から仕組んでおかなければならない。それを今、一生懸命考えています。


メトロールでは一緒に働く仲間を探しています。

メトロールは生産設備や工作機械などの自動化に貢献するセンサーメーカーです。東京都立川市で作ったセンサは世界74ヶ国、7000社以上のお客様にご利用いただいています。次世代のものづくりや設備に使用されるユニークなセンサの企画から開発・製造までを一貫して行う開発型メーカーでもあります。

メトロールブランドを共に支え世界へ広めてくれる仲間を探しています! 少しでも興味を持っていただけた方は、メトロールまで気軽にご連絡ください。まずはカジュアル面談からという方でもOKです!

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