製造業の意思決定に役立つデータ分析とは？
プロジェクト概要
- プロジェクトテーマ
- 生産管理や購買部門などの間接部門メンバーによるデータ分析スキルの習得研修
- プロジェクト期間
- 約3か月間
こんにちは、取締役の松橋です。
今回は製造、生産管理、マーケティングなどあらゆる部門でも重要な「データ分析」についてメトロールの考え方を解説します！
目次
「意思決定」は誰もが不安
誰でも仕事において「意思決定（決める）」ことは常にリスクが伴うため、心理的な負担は大きいですよね。
例えば、メーカーの業務における意思決定には次のようなものがあります。
- 大型の設備投資
- 広告予算の投資
- 営業施策決め
- 品質分析と対策
- 在庫の基準数決め
自分の意思決定がうまくいくかわからないなかで、数百万・数千万単位の大きなお金が動く場合は特に、担当者の気持ちはバンジージャンプから飛び降りるときの気持ちに近いものがあります。等級があがるほど何かを決めることが仕事になっていきます。
「決める」ための分析
そんな時、自分の意思決定の背中を押してくれるのは、「過去の実績（データ）から将来を予測する」ことではないでしょうか？
メトロールでは主要メンバーに向けて「データ分析」や「分析ツール」の研修に取り組んでいます。
本記事では、メトロールにおけるデータ分析の考え方、習得する仕組みについてお伝えしようと思います！
定性的な感覚も大事ですが、感覚を裏付ける「数字」はやはり客観的事実として押さえたいですよね、というお話をさせていただきます！
「データ分析スキル」は現在地を測るモノサシ
意思決定のプロセスは、現在の課題に対して目標を立て、ギャップを埋めるための施策（打ち手）を決めて実行することです。
そんな中でデータ分析は
- 感覚値を定量的にチェックする手段
- 散らばった関係者の認識をそろえる手段
- 目標に近づいているのかどうかを測る手段
といった重要な役割を担っています。数字は「客観的なモノサシ」として他者との認識を揃え、個人の感覚や判断が正しいかどうかを精査するで重要なツールとなるからです。
もちろん「直感的にこうしたいんです！」と提案することも大事ですが、認識が揃っていないシチュエーションでは、前提となるデータ（事実）の裏付け持っていたほうが関係者に賛同してもらいやすいというのは明らかです。
データ分析手法を身に着けることが目的ではなく、自分の仮説の根拠はこうです！と仲間を集めるために分析スキルが必要ですよね。
定量化を習慣に
メトロールでは、職種に応じて「データ分析」手法の習得を求めています。
なぜなら管理職や上位職になるほど「意思決定」をすることが業務として増えるためです。認識をそろえるためにも数字を客観的事実としてチェックすることを習慣化してほしいという期待があり研修を企画しました。
日ごろからデータ取りや分析が業務として存在する場合、スキルの習得機会は多々あります。しかしデータ分析が必須だと認識されていないような
・間接部門
・購買
・生産管理
などのメンバーは「仕事の結果を数字に置き換えて分析する」という機会が少ないように感じていました。
そこで、こうした部門のメンバーに分析を当たり前に行う業務として捉えてもらいたいと考えました。
分析だけでは評論家になってしまうので、キチンと意思決定に繋げる！ということが大事ですよね。
データ分析の目的：「数字」の無い会話を減らしたかった
私（松橋）の経験ですが、数字などの客観的事実がないまま担当者の体感値で報告や承認依頼を現場から受けることも多々あり、判断に迷うことが多くありました。実際にあった例だと以下のような会話がありました。
「自動機を導入すれば生産性があがるので購入させてください。」
「今注文が増えていて、納期に間に合いません。」
「内製化を増やしたことで外注加工費が減りました！」
「〇〇に関するクレームが多いです！」
上記の発言に数字を加えるとすれば以下のように改善されると、意思決定の際の判断材料も増え改善されるのではないかと考えていました。
「自動機を導入すれば生産性があがるので購入させてください。」
→「現状、月産300台の生産能力ですが、自動機を導入すれば月産1000台が可能で、受注が現状の倍800台にも余裕をもって対応できます。（だから導入すべきです）」
「今注文が増えていて、納期に間に合いません。」
→「前年平均で月500台注文だったところが、1000台/月来ています。納期を調整させてください。」
「〇〇に関するクレームが多いです！」
→「〇〇に関するクレームがここ3か月で30件来ています。」
「多い、少ない」「忙しい、忙しくない」などの表現は個人の感覚によるので、捉え方は人それぞれです。
100万円を大金と捉える現場の方もいれば、会社全体の予算で言えば1000万円くらいからが大金と思う管理者もいるからです。
だからこそデータ分析手法を習得することで、日々の会話の中に「数字＝共通の物差し」を入れることを習慣づけたいと考えました。
データ分析ツールとしてのエクセルの課題
代表的なツールには「エクセル」がまず第1に浮かぶと思います。
ただ製造業では顕著かもしれませんが、エクセルを苦手とする社員はいまだ多い印象です。それはなぜでしょうか。
エクセルの難点と分析に活用しきれない理由
シンプルに「エクセルの扱い方が難しい」という課題が存在します。
さらに分析を行うには、「データベース」「テーブル」などの概念を持っておくことがデータの蓄積・分析・活用において欠かせません。これらの知識は通常業務の中で体系的に学ぶ機会そこまで多くありません。
必要な前提知識が多く、データ分析がやりにくい
効率的に使用するためには作業者の知識・センスが必要になるからではないでしょうか。
エクセルの前提スキルには次のような例があります。
- データベースの知識
- エクセルの基本機能と一般常識の理解（1セル1データルールなど）
- 他者が見やすい集計結果の見せ方・デザイン
- 膨大なデータの加工方法
日ごろから課題意識をもって実戦ベースのエクセルの使用経験が無い限り、網羅的に体得するのは難易度が高いのではないでしょうか？以上を踏まえるとデータ分析はおろか、エクセルの習得の段階で大幅なロスタイムや脱落者がでることも珍しくありません。
そこで当社はBIツールを導入することでこのロスタイムを短縮することにしました。
BIツールとは？
「BIツール」はビジネスインテリジェンスの略で、データ分析を容易に行うことができるツールです。
自社の基幹システムとデータを連携することで、エクセルよりもカンタンに短時間で膨大なデータの加工や分析が可能になります。
BIツールとエクセルの比較
エクセルと比較したときのBIツールのメリットをいくつか挙げると
- Excelで時間をかけていたグラフ作成や資料作りの時間が大幅に削減
- エクセルよりもカンタンな感覚的な操作で分析ができる
- データを自動的に更新してくれるので定点観測しやすい
- 数式や関数の誤記が起きにくい
などメリットが多くあります。細かくデータ加工したい場合を除けばエクセルよりも断然使いやすいツールとして業務に定着しています。
メトロールでは数年前に導入以降、手軽に分析ができるツールとして活用していましたが、様々な部門の業務で活用できる人材を増やそう！ということで社内研修を実施することになりました。
データ分析研修を開講！
取締役が中心となって開講しました！学生時代や前職でも、SQLなどをつかった業務が多かったので、この点ではデータの構造や活用方法は多少知識がありました。
BIツールの活用事例
部門によって分析の目的が異なりますが以下のような事例があります。
- 需要予測から生産計画の立案
- 在庫計画
- 外部発注状況の分析
- 出荷リードタイム分析
- 設備投資による自動化対象の製品選定
データ分析研修の講義内容
目次としてはざっくり以下のような流れで全5回にわたって開講しました。
概念的な説明から実際のデータを使ってダッシュボードを作ったり分析を行って、より実務に特化して研修を行っています。
事後課題も出しながら、参加者が各自の業務でどう活かせるかなども考えてもらいます。
- データ分析の目的
- 基幹システム（ERP）のデータ抽出方法
- BIツールの使用方法
- 各部門ごとのデータベース理解
【対象部門】
・購買部
・生産管理
・工場管理
・社内SE
・経理財務
データ分析の心得
概念的には以下のようなことを強調して研修伝えています。
- データ分析が目的になってはいけない、課題意識をもって意思決定のためにデータ分析を行う
- 検証するために必要なデータは現状無くても集める仕組みを作ろう
- データはただの数字、数字に解釈を加えるのは読み手
└自社にはどんなデータがあるのか？
└そのデータからどんなことが読み取れるのか？
└既存のデータを加工することでどんな分析ができるのか？
などのポイントをレクチャーしました。日々どんなデータが誰のどんな行動によって会社には蓄積されているのか？という視点から、ツールの活用方法を講義では解説しています。
数字を掴んでいる人は信用される
データをもとに的確な判断ができる人の提案・判断に対する周囲の信用は絶大です。なぜなら経営や管理職は業績結果を最終的にどんな数字で表現できるかが問われているためです。その観点から、製造業はデータ活用人材がどれだけ育成・配置できるかが事業スピードを上げていく上で非常に大事なテーマだと考えています。
当事者たちにデータを見てほしい
これまでのメトロールではデータ分析は「できる人ができるときにやる」という属人的な業務でした。
しかし当事者以外の人の分析結果をもとに下された判断が業務として現場に降ろされるだけでは、現場の当事者意識や危機感はが薄まってしまいます。
だれでもデータ分析ができる昨今においては、当事者たち自らが仮説立案、データ分析、改善提案を実行していくことが、現場の判断スピードや成果、やりがいに繋がっていくと考えています。
データはあくまで「ただの数字」。数字にどんな解釈を与えて、どんな意思決定をするかによって初めて価値が生まれます！見る人（解釈する人）が増えればそれだけで新しい発見に繋がるはずです！
直感も大事
誤解のないようにお伝えしたいのは、
・定性的な感覚（直感）は間違っている
・数字に全て知りたい事実が現れる
と言いたいわけではけっしてありません。
日々課題に取り組んでいる人の感覚はむしろ優れていて、数字には表れない「直感」は人にしか出せない貴重なアウトプットだと思います。私自身も直感や肌で感じ取ったアイデアやリスクを大事にしています。
こうした直感は「事実はどうなっているのか？直感を検証してみよう」という課題の突破口として活用することが、周囲のメンバーを巻き込んで仕事をしていく上で重要ではないでしょうか。
ぜひ一緒にデータ分析スキルを身に着けて、仲間を巻き込む分析能力を身につけましょう！
メトロールでは一緒に働く仲間を探しています。
メトロールは生産設備や工作機械などの自動化に貢献するセンサーメーカーです。東京都立川市で作ったセンサは世界74ヶ国、7000社以上のお客様にご利用いただいています。次世代のものづくりや設備に使用されるユニークなセンサの企画から開発・製造までを一貫して行う開発型メーカーでもあります。
メトロールブランドを共に支え世界へ広めてくれる仲間を探しています! 少しでも興味を持っていただけた方は、メトロールまで気軽にご連絡ください。まずはカジュアル面談からという方でもお待ちしております!
